挫折しないという巨大なリスク

私が新卒の採用を行う場合、確かめておきたい事実がある。

 

 

「あなたはどんな挫折を経験してきましたか?」

 

 

挫折とは思い通りに行かなかった結果だ。なぜ、思い通りに行かなかったのか。自分に嘘をつくことなく、その事実を突き詰めていくとき、人は謙虚になる。

 

 

謙虚は感謝を生む。感謝することで、他者は力を貸してくれる。どんなに能力がある人間でも、自分だけの力で成し遂げることはできない。この未知の変化の時代であればなおさらだ。自分ひとりで積み重ねてきたものは、他者の助けを借りることで初めて形となる。

 

 

人間関係が実体のない個々の力に輪郭を与える。自分の力を発揮することができるのは、自分を理解してくれる他者の助けがあるときだ。謙虚でない人間、感謝のない人間を人は理解しようとしない。

 

 

挫折そのものがリスクではない。挫折を経験していないことがリスクなのだ。挫折を経験していない人は、挫折に対する耐性に欠ける。そのため社会で経験する初めての挫折によって、立ち上がれないほど心が折れることも少なくない。

 

 

学校的な枠組みの中では、往往にして挫折をしない人間が優秀とみなされる。彼らに与えられた過剰な評価は、やがて大きなリスクとなって彼らの人生にのしかかってくる。

 

 

人育ての能力が低い人は、できるだけ挫折をさせないように仕向ける。しかし、その能力が高い人は、挫折を貴重な学びの機会と捉え、多くを学び取らせようとする。

 

 

挫折でしか得られない学びがあり、それはどんな学びよりも大切な学びである。

 

 

これにいつ気づくことができるか。それが人育ての質を決定づける。

 

 

 

(了)