木を見て森も見る(1)

近年、医療分野において、総合診療という考えが注目を集めている。

 

 

医療の高度な発展により専門化が進み、医師が専門臓器しか診ないという弊害が起こり始めた。そこで、専門医療とは異なり、全人的に患者を診断する動きとして総合診療という概念が生まれた。

 

 

これは何も医療に限った話ではない。情報や技術が発達すれば、専門化や細分化が進む。そういう環境では専門分野に長けたスペシャリストは生まれるが、全体像を把握できる人間は少なくなる。知らず知らずに「木を見て森を見ず」に陥っている。

 

 

教育も同じだ。幼稚園・小学校・中学校・高校・大学が分断されている。最近は、幼小一貫や中高一貫の動きも見られるが、それは制度としてのつながりに過ぎない。

 

 

例えば、ある子どもに「つまずき」があるとする。そうすると、中学分野を専門とする人は、自分の専門分野である中学の視点でその「つまずき」を判断しようとする。もしかしたら、幼児期に端を発する「つまずき」の可能性があるにもかかわらず、「木」を見ることから抜け出せない。

 

 

これは受験指導や生活指導に限らない。子どもや対象者を自分の専門分野に当てはめてしまうと、「つまずき」の根を一層深めることになる。その結果、小学生に大学受験の勉強方法を押しつけて更に勉強嫌いにさせ、中学生の生活指導方法を幼児にあてはめて萎縮させることになる。

 

 

今の教育は、教育という最も全人的な視点が必要とされる分野で、それぞれの学年や学校の「スペシャリスト」が見知った「木」を見ている。

 

 

(続く)