To the mentors of the future

不透明な時代の生き方を探すライフコーチング

人生に関わる人を選ぶたったひとつの基準

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2019年も残りわずか。元号も令和に移った象徴的な一年だった。

  

 

今年も家庭から企業に至るまで多くの人と関わった。保護者や生徒はもちろんのこと、教育コンサルタントとして組織的な人材育成に参与し、社外相談役という立場で組織改革に取り組むなど、企業との関わりが多い一年でもあった。

 

 

経営者として、上司として、従業員として、その立場に応じて葛藤や悩みは等しく与えられている。それぞれの立場の「正」がぶつかり合っている。経営者には経営者の、上司には上司の、従業員には従業員の正論がある。親子関係と同様、その正論がせめぎ合っている。

 

 

人が集まり共同体が構成される。社会のあまねく場所に人がいて、人との関わりの中で生きることが義務付けられている。自分にとっての他者という存在は、空気のように必要不可欠である。人がいなくては社会は成立せず、生きていくことができない。

 

 

空気が薄い場所は人を息苦しくさせる。粉塵や排気ガスが充満する環境が重大な疾患を招くのは想像に難くない。人間もまた空気と同じような役割を果たし、生活環境の質を決定している。息苦しい人間関係は、空気の薄い高地のように文字通り希薄で息苦しい。

 

 

結婚を考えているという女性から、結婚相手についての相談があった。仕事の相談から私生活にも話が広がり、最後の最後でためらいがちに口を開いた。

 

 

「あの‥くだらない質問だと思ったら答えて頂かなくて結構です」

 

「質問に序列をつける習慣はないので大丈夫です」

 

「よかった!ありがとうございます。結婚相手を選ぶたったひとつの基準はありますか。思い当たるものはあるのですが、いまひとつ確信がもてなくて」

 

 

その女性のすがるような目を見ながら、似たような相談を受けたことを思い出した。とある経営者が会社を起業する際、創業メンバーを採用するに当たってこれだけは外してはいけない採用基準を教えて欲しいとわたしに依頼してきた。

 

 

「温かさです」

 

 

即答すると、彼女は祈るように胸のところで両手を組んで小躍りした。

 

 

「よかった!やっぱり合ってた!友だちに相談しても、ぴんとこない人が多くて自信がなくなっていたんです。よかった!」

 

「その人たちは、『温かさ』が何かわからないので、そういう反応をしたのだと思います」

 

 

「温かさ」は上辺だけの優しさではない。打算的な同調や日和見とも違う。人当たりの良さやお人好しといった薄い反射的感情でもなければ、明るさや快活さのことでもない。

 

 

知性的かつ理性的に、深い広い認識の窓から慈しむような繊細な眼差しで世界と相手を眺める。相手の現在を考えるのが優しさだとするなら、相手の過去と未来も含めて考えるのが温かさだ。雰囲気や印象とは別の深い場所にあり、その人の考え方や発言や所作のすべてに及んでいる。

 

 

ビル・キャンベルはGoogleとAppleに多大な影響を与えたコーチとして知られている。GoogleのCEOはビル・キャンベルがいなければGoogleの成功はなかったとまで言わしめている。シリコンバレーという最先端のテクノロジー業界の企業経営や組織運営において彼が持ち込んだのは「温かさ」だった。

 

 

「温かさ」のない人間関係は、氷上を歩くのに似ている。上滑りするだけで前に進まない。動きを止めると足から身体が冷えていく。

 

 

「温かさ」は真であり、善であり、美である。真善美をすべて備えている資質は他に数えるほどしかない。豊かな人間関係を育む人生の真の成功者は、「温かさ」というお金で買えない資質を持ち、それゆえに人を幸せにし、自分も幸せになる。

 

 

「温かさ」は時間を超えて継承する。友人から友人へ、親から子へ、上司から部下へ引き継がれていく。譲り受けなかった人は、知らないまま終わる。譲り受けた人は、それを誰かに譲り渡す。温かさを知らなければ、誰かに渡しようがない。誰かの人生を本当に豊かにして、自分も豊かになるには、本当の温かさを知らなくてはならない。

 

 

その方法はある。前述の女性は聡明にもその方法のひとつを選択しようとしていた。

 

 

(了)

 

 

  

〈ごあいさつ〉

 

今年も多くの皆様にプログを閲読頂きましたこと、ここに御礼申し上げます。新しい年が皆様にとって実りある一年となることを願っております。

 

石原弘喜