素直な子どもは伸びる。
それは昔から言われてきたことではある。裏返せば、「素直でない子どもは伸びない」ことを意味する。
素直でない。それは心にロックをかけている状態だ。周囲の言葉は耳に入っても心には届いていない。そのロックを解除しなければ、どんな「正論」であっても力を持たなくなる。
教育現場において「正論」が生徒に対してそれほど強い力を持たないのは、こういう理由があるからだ。むしろ、正論は弱い。そう認識することが教育にとっては必要なことだ。
ロックがかかった心は不自由である。自分のやり方が正しいと思い込み、自分の考えを変えない。自分の世界にロックをかけて、自分をそこに閉じ込めてしまえば、もはや世界は広がらない。不自由とは、自由に成長できないことをいう。
自分のやり方や考え方に固執する。それは「現在」の自分に固執しているのと変わらない。それは「未来」の遮断であり、成長の放棄であるとも言える。
なぜ、心にロックをかけるのだろうか。それは「過信」と「不信」があるからだ。自分に対する過信。他者に対する不信。頑な心は「価値」に気づかない。
ロックを解除するには鍵が必要だ。相手のロックの種類に応じて鍵を用意しなければならない。相手を非難しても、論破しても、怒鳴っても、体罰をしても、ロックが解除される訳ではない。
鍵を開けるには自分から近づいていく必要がある。鍵のついた扉の方から近寄って来るような都合の良さを望むのは、教育ではない。
ロックを解除できる鍵を探す。それを手にして歩み寄る。扉を開く。「正論」はそれからだ。
鍵を開けるとはそういうことだ。
(了)