(前号からのつづき)
受験に象徴されるような学習戦略をデザインするには、対照的な二つの視点を持ち合わせる必要がある。
主観と客観。ミクロとマクロ。遠視と近視。過去と未来。
両極端の視点をバランス良く自分の中に抱える。片方の視点で見えたことを、もう片方の視点で分析する。そうすることで、的確な現状把握が可能になる。
過小評価でも、過大評価でもない現状把握。自己評価の低い人間は、結果を自分のせいにする。自己評価の高い人間は、結果を他者のせいにする。因果関係を正しく認識しなければ、的確な現状把握は覚束ない。
現状を把握した後は、変化のステージに入る。何をどこまで変えるのか。立案したデザインの実現可能性を常に検証する。その過程で現実とデザインのズレが生じた場合には、どちらかを変えなければならない。
デザインに合わせて現実を変えるのか。現実に合わせてデザインを変えるのか。それとも、どちらも変えないのか。
これまでの経験から言えば、成功者の多くはデザインを変えた。それも手直し程度ではない。デザインそのものを見直して、新しく書き換えるほどの劇的な変化を選んだ。
デザインとは現実に対する思い込みの反映とも言える。自信のある人間は高い目標を定めるが、それは現実に対する過小評価の裏返しでもある。実力以上の目標設定とも見る人もいるだろう。現実とデザインのズレはそこから生じる。
だが、目標とは常に実力を超えたものだ。目標という現実は自分のデザインの上を行く。その意味で、デザインとは変化が予定されたものであり、変化のない戦略的デザインはない。
ある意味、最初のデザインは経験の裏付けがない点で「思い込み」である。経験によって修正された次のデザインが本当の戦略デザインとも言えるだろう。
思い込みの破壊。それは立ちはだかる壁の破壊でもある。現実を克服するために変化するということは、思い込みを破壊して、自分が変化していくことだ。
時に、自分が拘り続けてきたやり方を全て捨てる局面に遭遇することもあるだろう。成功した人々を見ると、そういった自分の思い込みを破壊できた人々が目標を達成していたように思う。
何を変えて、何を変えないか。変化は短期的で、貫くことは長期的なものだ。「貫くために変える」という決断を下すことができた人間が、目標を達成した後も、高い志を持ち続けている。彼らは制した。
変化に対する視点。それが「制する」ことに直結している。状況も自分も変化する。とすれば、何が必要であるのか。その認識の結晶が、学びに未来を与える。
(了)