「最近、子育てが下手な親が増えたと思うのですが、先生の見解を聞かせてもらえませんか?」
そんな連絡が知り合いの教育関係者から届いた。保護者を前に子育ての話をすることになったという。そこで私の見解を聞きたいとのことだった。
印象だけで下手だと判断するのは容易だろう。しかし、三十年前の親が今の親より子育てが上手だったと断言することはできない。
なぜなら、三十年前の親たちの子育てが上手であれば、現在の親たちが現在のような評価を受けているはずがないからだ。しかも、親の力量は当然個々によってばらつきがあり、一概に世代の問題へとすり替えることはできない。
しかし、ひとつだけ確かなことがある。現在の親の子育てが下手になる要因は、三十年前よりも遥かに多いということだ。もし仮に、三十年前の親たちが今の時代に生まれついたとしても、同じような評価を受けるにちがいない。
三十年前、日本はバブルの絶頂だった。経済的な豊かさをこれでもかとばかりに浴びながら、それがどこまでも続くという「右肩上がり」の錯覚の中にいた。その時代に子ども時代を過ごした現在の親は、彼らの親が抱いた「右肩上がり」の幻想を受け継いでいる。
右肩上がりで成長を続ける。自分たちがそうであったように、この先の未来、自分の子どもたちはピークを享受する。その幻想を抱き続けたまま子育てをしている。
しかし、現実は違う。
現在の子どもたちのピークは今だ。彼らはすでにピークを享受している。これから先は、右肩下がりになっていく。それを認識している親と、そうでない親の二極化が進んでいる。前者よりも後者の数が圧倒的に多い。それが冒頭の「子育ての下手な親が増えた」という印象に繋がっている。
現在の親たちが子育てを見誤るのは、彼らの親世代から受け継いだ「右肩上がりの時代の子育て」を、右肩下がりの現在にそのまま当てはめているからだ。人口は縮小し、少子化が更に進行する。社会は制度疲労を起こし、日本のムラ社会に通用した鎖国的な制度は、論理的でフェアの思想を携えたグローバルな波が洗いざらいひっくり返す。
右肩下がりの日本のムラ社会とムラのコミュニティは、グローバルな思想を持った有為な人材に牛耳られ、それまでの膿を血が混じるほど絞り出されるだろう。すでにその兆候は社会の至るところで現れている。今の子どもたちは時代の狭間に生きる最も困難な世代となるかもしれない。
その危機意識をあなたは持っているだろうか。「右肩下がり」の困難な時代を生きていく子どもたちを育てるために、あなたが抱いている子育て観を捨てる必要があるかもしれない。自分の子育てがうまくいったという親の自己満足や、とりあえず世間体は保つことができたという親の安堵は、「右肩上がり時代」の遺物だ。
それでは「右肩下がり時代」の子育てにとって最も大切なことは何か。親は子どもに何をしてやることができるのか。子どもに「右肩下がりの時代」を生き抜く力がなく、子どもが悲嘆に暮れずに済むようにするのはどうしたらいいのか。
2月2日の講演会では、その問いに対する答えをお話したいと思う。
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【教育コンサルタント 石原弘喜・教育講演会のご案内】
◯日時 2019年2月2日(土) 13:15-14:45(開場13:00)
◯会場 戦災復興記念館 4F 研修室
◯参加費 1,000円(当日ご持参下さい)
◯申込方法
info@altiseek.netのEmailアドレスまで「氏名」と「参加人数」をご連絡下さい。
◯演題
〜尊敬される親になる5つの視点〜
「子育ての常識」を捨てる新時代の子育てコーチング講座
(主な内容)
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従来の「子育ての常識」が通用しない「右肩下がりの時代」が到来した
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学力が伸びる仕組みを把握している親が最も強い
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新時代の子育てのキーワードは「尊敬」
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東大・京大・医学部・難関大を目指すご家庭へ
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子どもの学力を低下させる3つの言動
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子ども能力を引き出す3つの言動 ほか