【質問】
「コロナ禍は子育てにどんな影響を与えますか」
【回答】
はい、ひとことで言えば、「子育てをわからなくさせる」という影響を与えます。
少し構造的な話をしましょう。
戦後、日本の経済成長を支えてきた太い柱は終身雇用制度でした。母親である専業主婦が家庭を守り、父親は社会で仕事をする。それが一般的な家庭像であり、勉強や学歴というのはよりグレードの高い家庭モデルを手に入れるための手段でもありました。
日本は同調圧力のムラ社会ですから、世間や親戚の目に怯えながら、子育てにおいても沈黙の競争を強いられてきたのです。子どもの成績でマウントを取り、承認欲求を満たす親も少なくありませんでした。社会学者の指摘を待つまでもなく、そうした光景は至るところで見受けられたのです。
しかし、その代償は大きいものでした。
成績さえ良ければ人間性は問われない。とても近代とは呼べないような価値観が学校においてさえも長く続いた結果、「自己を確立できなかった大人」が多数派に迫る勢いで台頭を始めます。
自分を確立していないため、親として子どもをどんな風に育てていいかわからない。どんな人間になって欲しいか答えられない。とりあえず勉強ができればいい。
「なんのための勉強ですか?」と尋ねても、言い淀む。頭の中で勉強と高学歴と年収とグレードの高い家庭モデルがぼんやりと連結しているのですが、うまく言葉にできません。
言うまでもなく勉強は大切です。多様な知識を得ることで、問題解決の引き出しが増えるからです。それは同時に、自分の未来のオプションを増やし、変化のきっかけを掘り起こしてくれます。知識は武器なのです。
コロナ禍以後の時代、つまりポスト・コロナでは、そうした「学びの定義づけ」が子どもも大人にも求められるでしょう。「守りの勉強」と「攻めの勉強」というように、惰性で続いてきた勉強を再定義しなければ、子育ては前に進みません。
「守りの勉強」というのは、自分の価値を高め、経済的にある程度の自由を得られる未来を得るための勉強です。
「攻めの勉強」とは、激変する時代の中においても、自己を確立して問題解決能力を高め、精神的に自由でいられるための勉強です。これは大人になってからも学び続ける根拠となります。
この2つがポスト・コロナにおける勉強の意味だと考えてはどうでしょう。前例の経験則が通じない時代において、QOLと呼ばれる「人生の質」を高める方法としての勉強です。合理的な思考に慣れている今の子どもたちを納得させるに十分だと思います。
これまで、終身雇用制度はスピードの乗った自動車のように昭和から平成を駆け抜けてきました。そのアクセルは少しずつ緩み、今は誰にも踏まれていません。惰性で進んでいます。その様子から「まだ進んでいる。これからも進み続けるに違いない」と錯覚するのはやむを得ないことかもしれません。
その急ブレーキとなるのがコロナ禍かもしれません。惰性で走っている自動車は失速し、やがて止まります。そのとき初めて前例のない時代が訪れたことを実感します。「子育てをわからなくさせる」とはそういう意味です。
これからますますたくさんの情報が飛び交います。取捨選択の難しさ。混乱と迷いが入れ替わり立ち替わり押し寄せ、あなたの子育てのリテラシーをしつこく試そうとするでしょう。
しかし、子育てに限らず、物事の本質はシンプルです。知性と品性を中心に子育てを考えてください。その2つはいかなる時代であっても揺るぎません。混迷の時代だからこそ、時代の価値観に右往左往しない価値を軸に子育てを考えることをお勧めします。
2021年は1日でも多く青空が覗いて欲しいものですね。
(了)
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