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人間関係が楽しくなる・日本人向けコーチング入門講座(1)

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最近、「コーチングを指導して欲しい」という依頼が増えました。ビジネスとスポーツを入り口としてコーチングという考え方が輸入され、教育や子育てにも浸透してきたようです。

 

 

 

特に企業の管理職においてはメンター制度と同様、コーチングスキルの導入が進んでいます。

 

 

 

組織の管理職としての条件として、企業の生産性と競争力の向上に貢献し、価値ある人材として評価されるために必要なスキル。また、リーダーとして部下を育てる力を支えるスキル。

 

 

 

グローバルマーケティングを行う日本企業は、他のグローバル企業と渡り合うため、欧米のビジネススキルを取り入れます。関連会社や取引先もその影響を受け、関連書籍が出版されメディアやネットで取り上げられるようになると、そうした情報に聡い中小企業の経営者はコンサルを通じて研修を行い、マネージメントに反映させようとします。

 

 

 

西欧から生まれたマネージメントの新しい方法論を積極的に取り入れ、時代に追いつく。これが現代の日本企業の成長モデルの一つですが、西欧と日本に横たわる文化ギャップによって、日本の企業にうまく定着できないことがあります。コーチングもその一つかもしれません。

 

 

 

コーチングは西欧文化から生まれました。西欧では問題とその解決策を余すところなく言語で表現し、受け手も言語で表現された内容をそのまま理解する傾向が見られます。

 

 

 

声の抑揚や仕草や表情といった、いわゆる「非言語」の表現に頼る日本語とは正反対の文化から生まれた方法論のため、言語のみに頼る対話が得意ではない多数の日本人にとっては馴染みにくい点も少なからず存在します。

 

 

 

実はコーチングのスキル自体はそれほど難しくありません。その基本は、問いかけを通じて本人の中にある「正解」に気づかせるというものです。公式化した方法論を習得し、実践経験を積み上げて慣れていくのがコーチングの習得方法です。

 

 

 

流れとしては、数の教科書に載っている円の方程式の公式と例題の解き方を教え、問題演習に取り組ませ、解説とフィードバックを行うという手順と似ています。センスがある方であれば、短い時間でコツを掴み、コーチングの「公式」を使えるようになるでしょう。

 

 

 

しかし、数学同様、「公式」の丸暗記に頼ってしまうと、一つの公式に対して解ける問題の幅が極端に限られてしまい、基本例題と似たり寄ったりの「既知の問題」しか解けなくなります。

 

 

 

コーチングの公式の当てはめは、迷い混乱している相手の気持ちと心の情報を整理して励ます点では有効ですが、根本的な問題解決にはつながりにくいのが実情です。「なぜその問いかけが必要なのか」という公式の成り立ちを理解してはじめて、コーチャーや相談者にとっての「未知の問題」への解決の糸口を発見できるからです。

 

 

 

コーチングはバッティングにも似ています。コーチングでよく使われるワード公式通りに機械的に使うことは、人前でバッティングの素振りをするようなものかもしれません。

 

 

 

相手ピッチャーが存在する。相手がどんなボールを投げてくるかわからない。「ピッチャー」という言葉を削り、「ボール」を「言葉」に置き換えれば、コーチングそのものです。相手のピッチャーが投げたボールを打ち返すことがバッティングであり、コーチングも同じです。

 

 

 

ーー相手が存在する。

 

 

 

部下や知り合いでも、また親族であっても、相手の全てを理解することはできません。相手の一部分の姿を見て、全てをわかった気になってしまうのは、コーチングにとって好ましいことではありません。

 

 

 

人間関係には自分とは異なる相手が存在します。その相手に対して、自分の経験から「こういうタイプの人間だ」と確信したとしても、全く同じ人間は存在しません。

 

 

 

コーチングのような方法論は一般化を目指しているため、公式やマニュアルという形で類型化します。それは相手を「この人はこういうタイプの人間だ」と決めつける慢心にも繋がります。

 

 

 

しかし、相手の本当の姿は、公式やマニュアルの向こう側にいます。相手を励まし、小さな気づきを見つける手助けのコーチングだとしても、そのことを頭のどこかに置いておく必要があります。

 

 

 

この認識がコーチングのスタートラインだと考えています。

 

 

 

それでは、そのスタートラインからどのような一歩を踏み出せばいいのでしょうか。次回、その点について掘り下げていきます。

 

 

 

(続く)