To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

人を大切にする感覚

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今年の3月31日、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決され、成立しました。

 

 

この法律によって、クラス人数は5年間かけて計画的に40人から35人に引き下げられることになりました。約40年ぶりのことです。教育現場から熱望されていた少人数学級がようやく実現に向けて動き出しました。

 

 

なぜ人数が減ると教育の質が向上するのでしょうか。それは人数が少なくなればなるほど生徒の発言の機会が増え、教え手が生徒の話に耳を傾ける機会も増えるからです。わたしは30年以上に渡りそのことを実感してきました。

 

 

塾や企業研修やコーチング・コンサルティングを通じ、幼児から年配の方々まで幅広い年代の教育に携わり、1名から50名前後の生徒や受講生を相手に授業や講義を行う中で、人の話に耳を傾けるのに最適な形態は1 on 1、つまり1対1の対話形式でした。

 

 

1対1で定員を10名に限定してきたことで同業者の方々から羨望の眼差しを向けられることもありましたが、わたしの中ではキャリアを積み重ねた上で行き着いた自然なビジネスモデルでした。

 

 

自分に対する勝ち負けはあっても他者に対して勝ち負けはないという前提を踏まえ、敢えてビジネス的な表現を使わせてもらうなら、わたし・生徒・保護者の3者にとって「win-win-win」という関係が成立しているように思います。

 

 

10名という定員を設けたのは、それがわたしにとって生徒や保護者の方々を大切にできる上限だったからです。

 

 

この場合の「大切にできる上限」とは、生徒や保護者の顔や人柄が思い浮かび、全員に共感しつつ問題を解決する数的余裕のことです。「話に耳を傾けることができる上限」と言い換えてもいいでしょう。神経が行き届いていると感じられる人数の上限が、わたしにとっては10名でした。

 

 

人を大切にする。それは人の話に丁寧に耳を傾けることから始まります。教育だけでなく仕事も変わりません。離職や組織内の不和も、大切にされていないという感覚が原因として埋もれています。

 

 

相手のためにできる限りのことをしたいという当たり前の感情が芽生える関係性を築き上げるのは至難の業です。信用や信頼という言葉は絵空事のような響きさえ感じられるようになりました。かつては日常語だったその2つの言葉を口にするのがはばかられるほど、今では宝石のように希少な価値となってしまいました。

 

 

普段から話を聞くことによる信用や信頼が成立していれば、相手の方はこちらの話にも素直に耳を傾けてくれます。相手に共感し、話に耳を傾け、親身になって深く考える。信用と信頼を取り戻すためには、「人を大切にする感覚」を身体に覚え込ませる以外にありません。

 

 

いつか機会があれば、その方法について書いてみたいと思います。

 

 

(了)