To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

昭和型学力の終焉

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ーー学力とは学ぶ力。学校時代の成績を上げるためだけの力ではなく、仕事のスキルを高め、組織をマネジメントし、社員を教育する力。より円滑な日常を送るための知識を得る力。より善い人生とするために、経験から教訓を得る力。

 

 

人生100年時代への突入とともに、昭和型の終身雇用制度が崩れ、雇用の流動化や早期退職が一般的になった現在、「昭和型学力」の認識が音を立てて崩壊しています。

 

 

テストで点数を取るための力だと思われていた学力はほんの一面の姿に過ぎず、その本質は「先の見えない時代を生きるために必要な力」であることが周知されるようになりました。実際、学生の頃よりも必死で学んでいる大人の方も多いのではないでしょうか。

 

 

ここ30年の間、学力の捉え方に関しても「コペルニクス的転回」に等しい価値観の大転換が起こったように思います。

 

 

学力を高めて受験を突破。社会的に有利なポールポジションを獲得して先行逃げ切り。そんな昭和の常識はひっくり返りました。VUCAの時代を生きるために「学び続ける学力」が求められるようになり、学校の勉強はその練習の様相を呈しています。

 

 

VUCAとは、Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものです。破壊的とさえ呼べるような変化の時代を象徴する言葉として、ビジネスや社会学を中心に用いられるようになりました。

 

 

経済産業省のホームページをご覧になったことがあるでしょうか。「人生100年時代の社会人基礎力」と定義して、「考え抜く力・チームで働く力・前に踏み出す力」という3つの能力が掲げられています。さらに、「どう活躍するか・どのように学ぶか・何を学ぶか」という3つの視点も同時に公表されています。

 

 

いずれも「学び」の重要性と国の焦りが読み取れます。従来の「学校授業のための学力」からの転換が追いつかず、企業を通じて社会人教育を行うように働きかけているように感じます。学校と家庭の意識と時代が直面する現実の隔たりを埋めようという意図が見え隠れします。

 

 

勉強は学生時代限りだと思って頑張ってきたのにーー。そんな思いを抱いておられる親の方々も多いことでしょう。ここにきて「急なルール変更」を言い渡されるのは反則だという思いもあるかもしれません。

 

 

かつて年長者が敬われた理由を考えてみてください。儒教的精神の浸透と並び、「経験や知識の豊かさ」が挙げられます。昔話の「うばすて山」の通り、おばあさんの「智慧」が国を救ったことで、殿様は経験と智慧の価値に気づき、お年寄りを山に捨てる制度を廃止しました。

 

 

VUCA時代はかつての経験や智慧が通用しない時代です。年長者のアドバンテージが存在しない時代とも言えるでしょう。年長者であるという理由だけで積極的に人がついてくることはなくなりました。そのことを最も切実に感じているのは企業でしょう。

 

 

いかなる役職であれ、年下の者と肩を並べ、謙虚に学び続ける人間性を獲得しなければ人はついてきません。学力によって投影された現実を立体と仮定し、その断面図が最も大きな面積となるように切り取るとすると、学力とは「学びを通じて人間性を高める力」であり、ベン図の全体集合Uのように全てを包括するものであることに気づきます。

 

 

(了)