To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

勉強とご褒美とリーダーシップ

 

3月に入り年度末が近づいてきました。今年度の反省を踏まえ、新年度から気持ちを新たに取り組もうと考えているご家庭も多いことでしょう。

 


どうすれば勉強ができるようになるのかという質問を受けます。小学生は家庭から、中学生は家庭と本人が半々、高校生はほとんどが本人からです。

 


小学生に関しては、机の上以外での学びが多い子どもの学力が高いように思います。読書やパズルのような知的活動の延長線上に勉強が位置付けられているようです。

 


勉強と引き換えに何かを買い与えたり、ゲーム時間を延長するような報奨行為は一時的に効果はあるものの、長い目で見ると「勉強は非日常的で嫌なもの」という認識を刷り込んでしまうためマイナスに働きます。

 


しかし、食わず嫌いの子どもが勉強に触れるきっかけとして試す価値はあります。ご褒美につられて勉強に取り組んだことによって「知る楽しさ」や「できる楽しさ」を覚え、勉強習慣が身につく場合も少なくありません。

 


大人も同じです。わかることやできることは自己肯定感を高めるには打ってつけの方法です。

 


しかし、特定のテストや点数に対する報奨となると話は変わります。勉強がインセンティブのような成果報酬として子どもに認識されるようになると、日常生活がインセンティブを取るために廻り始めます。学びが自分のためではなく、報奨が目的となっているため、人間的成長が日常に組み込まれなくなるのです。

 

 

人間的成長がなければ人はついてきません。とくに若い世代は昭和世代とは異なり肩書きや権威に怯みません。人柄や人間性を率直に評価します。自分を高めるために学ばない人は、幅広い知見や学問が示す通り、リーダーシップを得ることはできません。

 


リーダーシップはチームのメンバーの力を引き出して、組織やチームの生産性を高める力です。マネジメント能力の重要性やリーダーとボスの差異が周知され始め、リーダーシップに多大な価値が付与されています。

 


リーダーシップに不可欠な資質はコミュニケーション能力や共感力といった外向きの作用です。これは自己開示が求められるため、損得勘定を軸に回転するインセンティブのための勉強習慣からは生まれにくい働きです。

 


視座の高さと視野の広さ。先の見えない時代を見通すその二つの力はリーダーシップを構成する一部です。子どもを適切に導くリーダーの役割を果たすためには、インセンティブのための勉強が自身の成功体験として記憶に残っていたとしても、それを教育に反映させることなく、謙虚に新しい学びを続ける必要があります。

 


(了)