To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

長編小説のような

 

今春、幼稚園から教えてきた二人の生徒が大学合格を果たしました。ひとりは私大の医学部、もうひとりは最難関私大の経済学部です。

 


改めて数えると、かれこれ13年以上教えてきたことになります。幼稚園児のときの無邪気で眩しい饒舌さは、やがて思春期に差し掛かる頃には影を潜め、代わりに少しずつ寡黙な時間が覗くようになりました。

 


華やかな合格の裏側では、長い日々の地道な積み重ねが人知れずそびえています。頑張りや努力という言葉すら空疎に聞こえるような継続の中で、成長する自分や変わる環境に戸惑いながら、高い目標に向かって進んできました。

 


背伸びして容易に届くような木の枝を選んで掴んだわけではない。ジャンプしても届く気配すらない天の枝めがけて毎日毎日ジャンプを繰り返し、最後の本試験のときにやっと枝を握り締めることができたのです。

 


その成長は長編小説そのもの。挫折、紆余曲折、失敗、落胆という成長に必要なすべてが盛り込まれた物語。

 


私の中で「ひとりの生徒を教え切った」という実感は、その生徒の長編小説を書けるという確信を抱いたときに湧き上がります。見違えるような成長を遂げ、葛藤や苦悩を露わにして自己開示してくる素直な子どもが主人公の方が読者の心を揺さぶります。

 


(了)