To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

Chat GPTの時代に必要な力

 

AIが人類の知能を超える技術的特異点をシンギュラリティと呼びます。従来は2045年とする説が有力でしたが、Chat GPTの出現によってその時期が早まるのではないかと言われています。

 

 

Chat GPTに関して特筆すべき点は、自然な文章表現と精度の高い内容にあります。知性的で教養ある人物とやり取りしているような錯覚に陥ります。

 

 

一方で、内容に誤りが散見されるケースもしばしば報告されています。この点を確かめるため、拙著「死んだ学力」について質問をしてみました。

 

 

「石原弘喜の書籍『死んだ学力』について概要を教えてください」という質問の表現形式を変え、何度か質問を行いました。以下、3つの返答を検証してみました。

 

 

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【返答1】

 

「死んだ学力」とは、石原弘喜氏が2010年に出版した書籍のタイトルであり、日本の教育に対する批判が主題となっています。

 

石原氏は、日本の教育制度において、詰め込み型の学習が主流であることや、教師の評価基準が出席率や成績に偏っていることなどに問題を指摘し、それが子供たちの学力の低下や、やる気の低下につながっていると主張しています。

 

また、石原氏は、学校における教育だけではなく、家庭や社会における教育についても言及し、家庭や社会が子供たちに与える影響が大きいことを指摘しています。

 

「死んだ学力」は、日本の教育に対する問題提起が多く含まれた書籍であり、教育現場に携わる人々や、子育て中の親などにとって、教育について考えるきっかけを与えるものとなっています。

 

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【返答2】

 

以下は、石原弘喜著書「死んだ学力」の主なポイントの要約です。

 

・日本の教育制度は、詰め込み型の学習が主流であり、それが子供たちの学力の低下や、やる気の低下につながっている。

 

・教師の評価基準が出席率や成績に偏っており、生徒たちの学力以外の面での成長や発展を評価することができていない。

 

・家庭や社会における教育も重要であり、子供たちが持つ「学びの心」や「やる気」を引き出すことが必要。

 

・「学びの心」や「やる気」を引き出すには、適切な褒め方や叱り方が必要である。

 

・学校における教育だけではなく、家庭や社会における教育も含めた教育改革が必要である。

 

・子供たちが自らの意思で学ぶことを促す「自主学習」が重要であり、教育現場においても、家庭や社会においても、その推進が求められる。

 

・教育現場においては、教師自身が学び続けることが重要であり、教育現場における「学び合い」が必要である。


・教育においては、個人の能力や資質を重視することが必要であり、標準化されたテストによる評価にこだわることは避けるべきである。

 

「死んだ学力」は、教育に関する問題提起が多く含まれた書籍であり、子供たちの教育について考えるうえで重要な視点を提供しています。

 

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【返答3】

 

『死んだ学力』は、石原弘喜著による2000年に新風舎から出版された本です。本書では、現代の教育制度に対する批判が提起されており、特に日本の教育システムが「死んだ学力」を生み出すことに焦点を当てています。

 

重要なポイントは以下の通りです。

 

学力低下の問題
本書では、学力低下が日本の教育システムの大きな問題であることを指摘しています。これは、受験勉強に特化したカリキュラムや詰め込み教育が学力低下の原因とされています。

 

受験教育の弊害
石原氏は、受験教育が生徒たちの「本質的な学力」や「生きる力」を育てることに失敗していると主張しています。受験勉強のために、生徒は暗記や短期的な成果を追求し、個々の才能や創造性が抑圧される傾向があります。

 

教育改革の必要性
本書では、教育改革が必要であることを強調しています。これには、受験教育からの脱却や、生徒の個性や才能を尊重し、創造性を育てる教育システムへの移行が含まれています。

 

親の役割
また、石原氏は親の役割についても言及しています。親が子どもの学力だけに価値を見出し、受験勉強を強要することは、子どもたちの成長を妨げることになると指摘しています。親は子どもの個性や才能を尊重し、成長をサポートする役割を担うべきだと主張しています。

 

未来志向の教育
最後に、本書では未来志向の教育を提案しています。これは、生徒が自分の才能や興味を追求し、社会に貢献できる人材を育てるための教育です。これにより、生徒は「生きた学力」を身につけ、社会で活躍できると主張しています。

 

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「返答1」の2010年という点を除けば、内容は本書に合致しています。仮にこのレベルの要約や概要を書くには、本書の熟読はもちろん、相当の読解力も必要になります。

 

 

単にキーワードの繋ぎ合わせや目次の抜粋にとどまらず、「学び合い」や「未来志向の教育」といった本書では用いられていない表現が見られます。Chat GPTの言語モデルが今の日本語にふさわしい表現を選び出し、要約した内容と紐づけている印象を受けます。

 

 

それはまるで著者の真意を理解している「人」の文章のような行間すら感じます。

 

 

人間の知識は「頭脳知」と「身体知」に分けられるという考え方があります。東大の藤井学長が入学式の式辞において、Chat GPTを念頭に経験学習の重要性について言及していましたが、経験に基づく身体知がAIと人間を隔てる確かな境界線です。

 

 

体験から学び、感じ、想像する力。それを言葉で表現する力。それがAI時代に生きる人が、人として自律するために必要な力なのだろうと思います。

 

 

(了)