コーチングは、問いかけによって相談者の中にある「解」に気づかせ、課題の解決を図ります。課題は人ぞれ異なり、その課題を知るのは相談者のみ。ゆえに、コーチは相談者の課題と解に「気づかせる」ことに終始します。
自分を知るのは自分のみ。それはつまり、自分の課題を知るのは自分だけであり、それゆえに、課題の解決方法は教えられるものではなく、気づくもの。その手助けをするのがコーチの役割です。
しかし、コーチングは万人に対して効果がある方法ではありません。むしろ、コーチングは相手を選びます。コーチングは変化を望む人に対してのみ有効であり、変化を望まない人は課題そのものに向き合うことを避けるため、自らの課題に気づくことはできません。
たとえば、不安。その不安を解消するためには、不安を生じさせている課題と向き合う必要があります。しかし、不安を解消したいという願望よりも、不安と向き合う覚悟の方が重いと感じたり、不安と向き合う自分に変化させることへの恐れを感じてしまう状況に置かれている人は、現状維持を選択します。こうなると、不安を循環させることに慣れてしまうため、身体が悲鳴をあげてはじめて、自分が助けを求めていたことに気づきます。
その前に、ひとりで不安を書き出してみるという方法があります。自分が書いた文字を目にすることで、自分の考えに気づくことは珍しくありません。
しかし、それも難しいようであれば、「不安を抱えている自分」を弱い、情けないと否定するのではなく、「こんなに不安なのに頑張っている自分はすごい」と言葉に出して自分に言い聞かせてください。不安は誰かに認められることによって和らぎます。自分で自分を受容する。それが「強さ」の始まりです。
(了)