To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチ・企業コンサルタントのブログ

混迷の時代の作法(4)

 

もしかしたら、時代という現実はいつの時代もシンプルなのかもしれない。混迷の時代に不可欠なその自問と最もシンプルなロジックのおかげで、時代を混迷にしているのは自分自身であると気づく。

 

混迷した自分の認識が、時代を混迷にしている。ひとりひとりの現実が、各々の認識によって生み出されているのであれば、時代を混迷にしているのは自分自身の認識である。

 

この現実を混迷だと認識する一方で、思考は物憂げに目標や理想を決めつける。誰に頼まれたわけでもなく、そうあるべきだという欲張りな思考の声に従い、目標と理想という刺激を追い続ける。

 

情報の砂浜から無数のポジティブな言葉を拾い上げるルーティーン。不都合な出来事をその言葉でオブラートのように包み飲み込むルーティーン。ネガティブは認めない、許さない。意図的だったそのルーティーンは、課題がたくさん詰まったネガティブな事象を思考の指示通りポジティブに麻痺させていく。

 

やがて思考すら介在せず、条件反射のようにすべて前向きでポジティブな言葉へと上書きされ、自分の内部に取り込む。ネガティブな現実に怯える感情。ポジティブな認識を生み出す思考。ネガティブな現実から課題を取り出し、自分自身と向き合う覚悟で課題を克服することによって、ネガティブな現実をポジティブな現実に反転させるという作法。思考に置き去りにされた感情を救い出すという始まりと終わりの作法。

 

孤立した感情は、せめてもの抵抗に現実を混迷させる。自分の感情に気づかない人は、他人の感情にも気づかない。思考が命ずるまま目標や理想のために、思いやりも共感のない環境に自らを放り投げ、混迷の認識に奪われる。混迷の時代は混迷の認識の子どもであり、混迷の感情を始祖とする。

 

(了)