To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチ・企業コンサルタントのブログ

メンターの数学的役割、成長と成熟


QOL(Quality Of Life)を「人生の質」と定義して、不安と不満の総量が少ないほど「人生の質」が高く、その総量が多いほど「人生の質」が低いとします。


不安と不満の総量を値に置き換えると、次のような公式が成り立ちます。


Y=QOLの値
A=自分でコントロールできること
B=自分でコントロールできないこと


と置いた場合、Y=A+Bとなります。


努力は道を切り拓くためには不可欠ですが、努力ではどうにもならないことがあります。運もそのひとつですが、最も顕著な例は人間関係です。



良き理解者に囲まれている人のBの値は、大幅なプラスとなり、Yの値の底上げに寄与しています。一方、人間関係に恵まれずに心労が絶えない人のBの値は、大きなマイナスを弾き出します。懸命に努力してAの値を高めているにもかかわらず、常に不安と不満を抱えている人は、Bの値がマイナスになっています。



どんなに自分で努力しても、自分がコントロールできない境遇に置かれた場合、Yの値は小さくなります。頑張っても報われない状態が続くことによって、それがマインドセットという思い込みを形成し、自己肯定感を低めていきます。



Yの「QOLの値」とは「自己肯定感の値」や「自尊心の値」とも言えます。



Bの値は運に左右されるという一面がある以上、「人間関係ガチャ」に外れてしまえば、いくら頑張っても意味がないと考える人も増えます。近年、若い世代に浸透している「親ガチャ」や「上司ガチャ」という言葉は、彼らの人生に対する実感から自ずと生まれたものであり、強い共感に支えられています。



しかも、現代はVUCA(ブーカ)と呼ばれる予測不能な時代の真っ只中にいます。コロナ禍や戦争によって世界全体が混乱に陥り、気候変動やAIの急速な発展という不確定要素が未来に控えている現実。現在の不満と未来の不満の境界線と社会と個人の境界線が、示し合わせたように失われています。



このような時代では、人々の不安と不満は増大し、その影響を受けてBのマイナスの値も増加します。自分の力だけでAの値を上げようとしても、Bのマイナスの値の方が大きいため、Yの値もマイナスになりやすい傾向にあります。



とすれば、Yの値をプラスにする方法とAの値を上げる方法はイコールになります。しかし、Bの値がマイナスに増加する速度よりも、Aの増加速度が上回る必要があります。ドラゴンボールの界王拳のように、Aの値を掛け算で増加させるトリガーがあれば、Bのマイナスの値に追いつかれることはありません。



前述の公式にX(成長のトリガー)という要素を加えると、次のようになります。



Y=QOLの値
X=成長のトリガー
A=自分でコントロールできること
B=自分でコントロールできないこと



このように置いた場合、Y=A×X+Bという公式が導かれます。



メンターとは複数存在するXのひとつです。Aの値を一定の上限まで引き上げることを「成長」と呼びます。上限に達して後で、Bの値を小さくする認識の変化を「成熟」と呼びます。「成長」は経験によってもたらされますが、「成熟」はメンターの役割です。



(了)