To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

大人の自己認識と問題解決

 

大人は子どもから大人になる。当たり前のことですが、日常生活の中で意識する機会はさほど多くないでしょう。

 


わたしは個人コーチング以外にも、企業コンサルティングの一環として従業員や役員と、家庭コンサルティングでは保護者の相談に乗ります。問題や課題の解決に絞り込んで指南する一方、テーマを決めての研修や講習で付随的に話を聞く場合もあります。

 

 

問題解決や課題解決は現在に焦点を当て、その原因を浮き彫りにし、必要であれば細分化を行い、将来に向けて原因を取り除く手順を明らかにします。このように、コンサルティングは認識に対して現在から未来に方向性を与えます。

 

他方、教育畑出身の習慣からか、相手の幼少期を想像しながら接する習慣が染み付いています。現在を起点に未来に向けて認識を働かせつつ、過去に向けて子ども時代の姿をプロファイリングしながら話します。

 

奇妙に思われるかもしれませんが、問題を根本的に解決しようと意識を未来に向けて順転させればさせるほど、解決から遠ざかる事例は少なくありません。純粋に組織的な問題であれば別ですが、たいていの問題の原因は当事者の個に密着しており、それゆえ問題の原因は過去に遡ります。

 

そのため、意識の順転と並行して、過去へと意識を反転させ、子ども時代の姿を浮き彫りにする必要があります。幼児期の家庭環境や育て方や行動や性格まで遡り、そこを起点として未来像を大きく映し出します。

 

これは凸レンズの実像と虚像の関係に似ているかもしれません。焦点距離の二倍の位置に物体を置くと、凸レンズの右側の同じ距離の位置に実像ができます。大人の問題解決は、実像と実際の像が同じ大きさになるような焦点距離の発見にも似ています。

 

凸レンズの中心が誕生だとすると、時間の経過とともに遠ざかり、やがて焦点距離を超えて大人になります。焦点距離は大人と子どもの境界点。その点に近づき過ぎれば実際よりも自分が大きい存在だと過大評価し、遠ざかり過ぎれば自分を小さい存在だと過小評価します。スクリーンに映った自分の像が、実体よりも大き過ぎたり小さ過ぎることが自己認識に齟齬を生じさせ、問題を引き起こしているのです。

 

子どもは焦点距離の内側に存在しているため、巨大な虚像が生まれます。その虚像は未来の子どもの姿。現在の子どもの像と虚像を照らし合わせながら、未来から現在を見るように接します。

 

このように大人と子どもの問題解決や課題解決は根本的に異なります。

 

(了)