夫婦の意見が合わないときには、家庭の機能は鈍化します。中でも最大の懸念は、問題解決ができなくなることです。
目に見える日常生活の問題には対処できますが、水面下で静かに肥大する見えない問題にどちらかが気づいたとしても、意見が合わないために解決することができません。
そのため問題は先送りされ続けます。やがて時間とともに目に見えるまで問題は大きく膨れ上がり、生活に支障をきたすようになる頃には、夫婦ともども身動きが取れない状態に陥ります。
そうなってしまうと、夫婦の意見が合っていれば選べたはずの未来であっても選ぶことはできなくなり、苦しい現実として受け入れるしかなくなります。
夫婦の意見が合わないケースはいくつかの類型に分けられます。今回は「自己肯定感が高い人」と「自己肯定感が低い人」の組み合わせの場合について述べてみます。
自己肯定感が高い人である場合、良かれと思って提案したことや行ったことが相手から予想外の反感を買うことがあります。
自己肯定感が高い人は、自力で余裕を生み出すことができます。その余裕のある言動が余裕のない相手にとっては鈍感さに映ることがあり、相手が極度に自己肯定感が低い場合には、攻撃と捉えられることも珍しくありません。
鈍感な人と自己肯定感が高い人の違いは、当人が不調のときでも余裕がある振る舞いができるかどうか、共感力があるかどうかで見分けます。自己肯定感が高い人は、調子が悪いときでも不機嫌になることはありません。
自己肯定感の低い人は、幼少期以降の体験が影響して、認知の歪みが生じていることがあります。問題を解決する最適な方法を自己肯定感が高い方が提案したとしても、感情的にそれを拒んでしまうのです。
その際、自己肯定感が高い人にとって相手の態度は理不尽に映るかもしれません。しかし、客観的にどれほど素晴らしい解決策であっても、相手の記憶の傷みに触れることもあることを覚えておく必要があります。
解決策がその方法しかない場合、とりわけ子どもの人生がかかっているような場合であっても、強引に意見を押し通さない方がいいでしょう。夫婦関係が信頼関係から利害関係に格下げされる危険性を孕んでいます。
一度失った信頼関係を取り戻すには、相当な時間がかかります。その間に幼い子どもが成人してしまうかもしれません。信頼関係の中で育った子どもは、他者と信頼関係を築きやすくなります。信頼関係の数は幸福度に比例します。
それではどのようにして夫婦の意見を合わせたらよいのでしょうか。
(続く)