To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチ・企業コンサルタントのブログ

時を加速させる(9)〜戦略的デザイン〜

(前号からのつづき)

 

 

四つの視点のうち、最後はストラテジック(strategic)な視点について書きたい。

 

 

ストラテジックとは「戦略的」という意味である。勉強、特に受験においては戦略的な視点は欠かせない。

 

 

戦略的視点とは監督の視点とも言えるだろう。現場でプレーするのは実際の選手たちだが、その戦略を練るのは監督である。その意味で、大学受験生はプレイングマネジャー、すなわち選手兼監督であることを求められる。平素の勉強で鍛錬を積む自分の他に、勉強の戦略を練る自分が要る。

 

 

勉強も戦略も「考える」ことだ。しかし、その質は明らかに異なる。

 

 

勉強は決められた狭い範囲を反復するのが基本である。用意された解を探す作業でもある。その意味で、受験勉強の本質は、「事前に準備」したものを本試験で得点として反映させる点にある。本試験のために、長い期間に渡って「事前に準備」する。それが努力と呼ばれる。

 

 

その準備の過程における思考力が、勉強における「考える」ことだ。一度目にした問題を解くために考える。初見の問題を解くために考える。いずれにせよ、受験勉強とは「予め正解の用意された問題」を「考える」ものだ。

 

 

一方、合格のための戦略は広い視野に基づく。自分を客観的に捉えつつ、自分の勉強方法を検証する。ゴールと自分の位置を確認する戦略的地図を持っているかどうか。そこには俯瞰的な視点が欠かせない。

 

 

合格のための戦略は予め正解が用意されていない点で、勉強と決定的に異なる。戦略は個別的なものだ。世界に二人といない自分という存在のために戦略を練る。確かにある程度の勉強方法についての戦略は類型化されている。だが、それが現在の自分に合ったものかどうかを判断するのは自分しかいない。

 

 

ゴールの設定はもちろん、学習計画に関して戦略的なデザインを描くことができる。難関大学に合格する人間は、この戦略的デザインに長けている。

 

 

この戦略的デザインを描く必要もなく、圧倒的な実力で合格する人間もいる。しかし、それは一握りに過ぎない。母集団のほとんどは、合格ラインの付近に散在している。このような状況では、戦略的デザインの出来が合否を決する。

 

 

物事をいかに戦略的に「考える」ことができるか。この思考力を鍛える点で、受験の価値は大きい。努力をいかに結果に反映させるか。合格という山頂に向けて、何を携帯して、どのルートを選ぶのか。ある意味、それは受験の醍醐味とも言えるだろう。

 

 

勉強や受験を通じて自分を知る。自分の人生をデザインするプラクティカルな力はそのプロセスからも学べる。無駄なことは何もない。

 

 

(続く)