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人間関係が楽しくなる・日本人向けコーチング入門講座(3)

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「人間関係が楽しくなる」ために必要なことを探していくと、「温かさ」であるというシンプルな解答に行き着きます。

 

 

 

温かい表情や態度には正論ほどの説得力はありませんが、共感力に満ちています。この共感力と人間関係の楽しさは密接に結びついています。

 

 

 

ーーすべての物事に通じる本質は同じである。それゆえに、無駄なことは何一つない。考え方、取り組み方ひとつで、日常生活のあらゆることを目標へとつなげることができる。

 

 

 

「冷たさ」は「分離」から生まれることを忘れたくはありません。自分を他者から切り離したとたん、心が冷え、感情が強ばります。それは他人に対する攻撃や怒りへと転じ、容赦ない結果論や自己責任論で自分を武装し始めます。

 

 

 

「温かさ」は結果よりもプロセスを讃えます。相手の努力や苦労に共感することによって、それぞれの生きにくさを分かち合い、人間的成熟の起点が生まれます。人はそれぞれの物語を生きており、その価値は結末ではなく経過にあると気づいた順から、冷たさの境界線を乗り越えていくのです。

 

 

 

「万里一空」の諺は、人間関係も含めて、物事はすべて繋がっていることを私たちに教えています。「温かさ」は繋がっている人を束ね、「信頼という協力関係」という最も効率的で合理的な状態へと昇華させます。

 

 

 

「温かさ」は机上の精神論ではなく、コーチングにとどまらずマネジメントや経営においても理にかなった資質です。なぜなら、人間が関わるあらゆることを建設的に前に進めるためには、「信頼という協力関係」が不可欠であり、その前提に鎮座するのが「温かさ」だからです。

 

 

 

一方で、正論や合理性を人間関係にねじこむ人々は、その「冷たさ」ゆえに「信頼という協力関係」から遠ざかり、結果として非効率で非合理的な状態で低値安定してしまいます。そのため、即効性がありそうな方法論を追い求め、次々に試しては取り替えていきます。

 

 

 

「冷たさ」は安易です。相手を気遣い、気持ちを察し、相手の立場で共感する必要もありません。自分と他者を切り離し、何を差し置いても自分を守ることを考えるだけだからです。

 

 

 

しかし、そこから生まれる人間関係は寒々として、刺々しく、毛羽立っています。いつも距離を感じながら、本心を語ることもなく、疑心暗鬼で毎日が進んでいきます。時間が経つにつれ、人生が「冷たい物語」で占められることになってしまうのですが、当事者はその温度に慣れてしまっているので抜け出すことができません。

 

 

 

「温かさ」とは教わるものではなく、手を握るような対話によって、「温かいとはこういうことなのか」と感覚に染み込ませるものです。その驚きが日常的な高揚感に転換されると「楽しい」という感情が芽生え始めまめるようになるでしょう。

 

 

 

言語的に相手を納得させようとするのではなく、共感によって感情を温める。日本人向けのコーチングを考えるにあたっては、その俯瞰的視点を外すことはできないように感じています。

 

 

 

(了)