To the mentors of the future

全世代の「教育力」を高める教育コーチのブログ

子どもや部下の自己肯定感を高める


大人にくらべて子どもが成長しやすい理由のひとつに、自己肯定感が挙げられます。子どもは万能感を携えて生まれてくるため、自己肯定感を低下させる経験にさらされることが少ないためです。


自己肯定感の大半は経験に左右されます。周囲から褒められ、励まされて育ってきた人は自己肯定感は高くなり、大人になっても持続します。自己肯定感が低い人は、そのような経験が少なく、抑圧や否定が多い環境で育った可能性が高いと言えます。個を封じる同調圧力も含まれます。


自己肯定感が低くなった原因がはっきりわからず、「いつの間にか自己肯定感が低かった」とか「どうにも自信が持てない」という声も多く耳にします。


明確な契機によって自己肯定感が低下した「自覚的な自己肯定感の低さ」は対処がしやすいのですが、はっきりした原因がわからないうちに自己肯定感が低くなっているような「無自覚な自己肯定感の低さ」の場合、克服には時間がかかります。


人は1日に約6万回の思考をすると言われ、そのほとんどは無意識です。日常の会話の中で交わされる何気ない言葉が、意識していないうちに自己肯定感に影響を与えます。


たとえば、年長者が自身の成功体験や考えを絶対視するあまり、それを無意識に押し付けていることで、相手の自己肯定感を日常的に削り取っているということがあります。


相手が頑張っても素直に評価できず、「まだまだ足りない」と発破をかける。褒めると相手が調子に乗るので褒めない。一言最後に余計な否定表現を付け加える。それが日々の風景として繰り返されるのです。


この態様は無意識のパワハラと同じで、年長者に相手の自己肯定感を削っているという感覚はありません。それどころか相手のことを思って奮起させているという意識があります。しかし、実際には相手にマウントを取ろうとしているのですが、年長者はそれに気づいていないことが多いのです。


かといって、むやみやたらに褒めても相手は成長しません。褒める教育と叱る教育のどちらがいいかという二項対立の問題に帰結させているうちは、子育てや教育はうまくいかないでしょう。


褒めるべきときに褒め、叱るべきときに叱る。最善を尽くしたらどんな結果でも手放しで過程を褒める。最善を尽くさなかったらどんな結果でも手放しで過程を褒めない。


自己肯定感を高めるために必要なのは、正当な評価です。それは「あなたの見えない努力もちゃんと見ているよ」というメッセージだからです。


自分を理解してくれる人がいる。相手は「自分がこの世界にいてもいいんだ」と安心します。それが自己肯定感の源です。褒めかたや叱りかたも大切ですが、それだけでは自己肯定感を育むことはできません。


(了)